【2019年度なわてん】直前レポート|計測ハードウェア研究室|本邦初公開、日本初の摩訶大将棋の彫り駒も!
なわてん開催まであと4日!いよいよ今週末開催です!
なわてん広報スタッフ3回生の松井と高瀬です。
今日は、計測ハードウエア研究室(高見ゼミ)を訪問し、古将棋の中でも有名な摩訶大将棋(まかおおしょうぎ)を研究する先輩達を取材してきました。
現代の将棋とはまるで違う摩訶大将棋って?
摩訶大将棋のルーツにについて研究している北田大河さんにお話を聞きました。
北田さん:摩訶大将棋とは、平安時代に誕生したとされている大将棋の一種です。
なわてん:摩訶大将棋と現代の将棋の違いは何ですか?
北田さん:ご覧の通り駒の数が大変多く、本将棋にはない駒があります。
また、取った相手の駒を使えないとか、対局中に全く動かない駒があるほか、当時は天皇が占いに使用していたのではないかとも言われています。
なわてん:結構複雑そうですね。
北田さん:複雑に感じるかもしれませんが、遊戯性も高く、現在のところ古文書から判明しているルールでは、実際に動く駒は96個のうち大体25〜30個程度です。やってみると面白いですよ。
なわてん:勝敗が決まるには時間がかかりそうですね。勝敗はどのようにして決まるのですか?
北田さん:王を取られたら負けというルールではなくて、大まかなルールとしては、不成(ふなり)の駒と呼ばれる駒が敵陣に入って、その後、敵陣の外の敵の駒が効いていない位置に無事に出ると勝ちというものです。
北田さん:実は対局時間はそんなに長くかかりません。勝ち駒が敵陣に入るところからなら、数手で決着させることもできますよ。
なわてん:ええ!そんなに早いんですか!?
北田さん:勝利に繋がる駒が、本将棋と比べて多いのが理由ですね。
なわてん:このテーマに取り組んで良かったことを教えてください。
北田さん:占いにも使用されていたことや、普段の日常生活では知ることのなかった紫檀(したん)や黒檀(こくたん)、ツゲなどの香木と呼ばれる木材のことや、将棋のルーツを知ることができたのが良かったです。
独自フォントを制作して平安時代の駒を再現
駒の文字をオリジナルフォントで制作している黒田達範さんと、香木で駒を制作している島村幸佑さんにお話を聞きました。
黒田さん:オリジナルフォントを制作して、全ての駒の名前の文字に使用しています。
なわてん:なぜ、わざわざ新しいフォントを作ったのですか?
黒田さん:実は駒のひとつに、磨羯(まかつ)という駒があるんですが、この「羯」という字、実は「羊偏」ではなく「魚偏」なんです。しかし魚偏の「かつ」という字に変換してくれるフォントが存在しなかったんですよね。
そこで、正しい「かつ」という字に変換してくれるフォントを制作しました。
なわてん:作品へのこだわりがすごいですね!
黒田さん:また、駒にはそれぞれ強さがありますが、それをわかりやすくするために、強い駒を太字で表現して、視覚的にわかりやすくしました。
なわてん:なるほど。これなら初めてする人でもわかりやすいですね。
なわてん:ところで、島村さんが制作された駒は、現代の将棋の駒のように末広がりでなく、変わった形をしていますね。
島村さん:はい。実は、現在発掘されている駒でもっとも古いものは11世紀の平安時代のもので、木簡を切ったものに墨で文字を書いて作られたようです。
駒は現代の駒のように末広がりでなく、長方形の板の先頭部を尖らせた五角形で、お守りと同じような底辺から垂直に立ち上がった形をしていたんです。
なわてん:そうなんですか?
島村さん:今の将棋の駒のような傾斜も付いていません。それぞれの駒ひとつずつに呪力を持ったお札のような意味があったのではないかと思います。
なわてん:制作に苦労した点はなんですか?
島村さん:摩訶大将棋の駒の材料となった木は、仏壇などで使用される紫檀(したん)や黒檀(こくたん)のような霊木(れいぼく)だったのではないかと言われています。
黒檀はチェスの駒にも使われている木ですが、他の木と比べて重く硬いので、手作業で加工するのはとても困難でした。
そこで今回の制作では榧(カヤ)と桑(クワ)の木を使用しました。これらも霊木です。クワはその葉を蚕の餌にすることで知られている神聖な木ですね。
なわてん:工夫した点は何ですか?
島村さん:制作した駒の素材は香木ですが、コーティングすると匂いが消えてしまうため、あえてコーティングせずに香木本来の匂いをそのまま残しています。
また、駒の縦横の大きさは当時のものと同じですが、若干厚めに制作しました。こうすることで、実際に駒を打った時に手応えを感じられるようにしました。
なわてん:見た目だけで無く、普段気づかないような細かいところや、使用感にまでこだわっていて凄いです!
摩訶大将棋の特殊なルールを少しでも分かりやすく
摩訶大将棋のマニュアル本を制作している出口友香さんにお話を聞きました。
出口さん:初心者向けのこのマニュアルには、勝利条件や駒の強さ、動きなどが細かく記載されています。
なわてん:制作に苦労した点は何ですか?
出口さん:例えば、狛犬や師子という駒は、その駒の周囲の敵駒を動くことなく取ることが出来る居喰い(いぐい)という動きができる特殊な駒です。
こういった摩訶大将棋の特殊なルールを、少しでも分かりやすく説明するのに苦労しました。
なわてん:どんな工夫をされたのですか?
出口さん:例えば、キャラクターを制作して、馴染みやすい雰囲気にしたり、駒が動ける範囲をひとつずつ図に表して、「この駒はこういう動きができる」「この駒は斜めにしか動けない」とひと目で分かるようにしました。
なわてん:これなら初心者でも本を片手に、動きを確認しながら対局できそうですね。
摩訶大将棋の復刻・再現
続いて、摩訶大将棋のルールや背景について研究している笠井智也さんのお話です。
笠井さん:平安時代の摩訶大将棋を様々な角度から再現してみようと思っています。
なわてん:どういう展示になるのですか?
笠井さん:摩訶大将棋の将棋盤は平安京をモデルにしていると言われています。そこで、平安京の航空写真を将棋盤に重ねたものを見てもらおうと思っています。
また、将棋自体初心者の方でも当時を想像して楽しめるように、戦術的な指導やマニュアルをみてもらいながら対局を体験してもらおうと思っています。見れくれた人たちに興味を持ってもらえるような展示を目指しています。
本邦初公開!日本で唯一の摩訶大将棋の彫り駒
今回は、高見先生との共同研究で摩訶大将棋の彫り駒を制作された、アマチュア駒師の田中賢一さんにもお話を聞くことができました。
田中さん:私は元々趣味で将棋の駒の生地を作っていたのですが、ある将棋のイベントに出展した時に、隣のブースで出展していらしたのが高見先生で、その時に摩訶大将棋の駒の制作について声を掛けていただきました。
田中さん:平安時代の地層から出土している将棋駒の多くは、板に墨書きされた簡素なものですが、高見先生は「当時の天皇が占いに使ったかもしれないものがそんな簡素なものであるはずがない、呪力を持たせるために文字は掘られていて高級なものだったのではないか」と考えておられるので、文字を彫り込んだ駒を作ることになったわけです。
現在、摩訶大将棋の彫り駒は発掘されていないので、これが日本で唯一の摩訶大将棋の彫り駒です。
なわてん:駒はどのようにして制作しているのですか?
田中さん:材料の板から駒を切り出して整形します。そして文字の原稿を頂いたら、駒に重ねて上から彫刻刀で彫っていきます。
文字が掘れたら、そこに漆(うるし)を流し込んでいきます。
この駒はツゲの木を使用しています。ツゲは昔から髪をとかす櫛(くし)に使われてきた木ですね。将棋の駒にもよく使われています。
なわてん:制作に工夫した点はありますか?
田中さん:駒の大きさは全部同じで良いという指示だったのですが、やはり長年将棋のコマを見てきた身としてはどうしても、ということで、駒の強さに応じて大きさを変えています。
歩兵などが一番小さく、王将あたりが一番大きいです。全部で9種類の大きさの差を作りました。
高見ゼミのみなさんと田中賢一さん、ありがとうございました!
摩訶大将棋彫り駒は、笠井さんの展示で実際に手に取って触ることができるそうです。
なわてんでの展示をお楽しみに!!
高見ゼミのブログサイトには、摩訶大将棋に関する情報がいっぱいです。
摩訶大将棋のブログ|大阪電気通信大学 高見研究室
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